皆さんがご存じのメタボリックシンドロームですが、わかりやすく言うと、これは「代謝異常」の事です。これには基準値があり、内蔵脂肪蓄積量(ウエスト周囲経男性85cm以上、女性90cm以上)を基準とし
①血清脂肪蓄積量(中性脂肪値150mg/dl以上、HDLコレステロール値40mg/dl未満のいずれかもしくは両方)
②血圧高値(最高血圧130mmhg以上、最低血圧85mmhg以上のいずれかもしくは両方)
③高血糖(空腹時血糖値mg/dl以上)
これらの2項目以上にあてはまると危険信号というわけです。これらがどうしていけないのかというと、現在の死亡原因の上位を占めている「脳血管疾患や心疾患」に大きな影響を与えている「死の四重奏」に該当するからです。癌は大変怖い認識は誰しもが持っている事でしょうが、全体死亡原因の約1/3に相当する約100万が1年間にこれら「循環器系」の症状で亡くなっているのです。基準値及び①~③のいずれも生活習慣が原因で発症する項目で食生活や運動療法が改善の鍵を握ります。
ここでは、このメタボリックシンドロームに関してのポイントとなる「脂肪」について説明いたします。
私たちが日常、脂肪と言っているものは栄養素でいうと「脂質」を指します。脂質は、糖質・タンパク質に並ぶ三大栄養素のひとつで生命維持には欠かせない成分です。1gあたり約9kcalのエネルギーを出すのですが、糖質とタンパク質が1gあたり4kcalのエネルギーですので、脂質は倍以上の高いエネルギーを出す事になります。
脂質は、水には溶けない性質で主な成分は炭水化物と同様、「炭素・酸素・水素」で構成されています。細かくいうと、糖質とは酸素と水素が含まれる割合が違います。
脂肪は、①単純脂肪②複合脂肪③誘導脂肪の大きく3つに分類されます。食物中大部分は①の中性脂肪で、②はタンパク質と他の物質を含んでいる脂質を意味し、③は脂肪酸、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)やステロイドなどがあります。
その働きは、①の中性脂肪はエネルギー源として重要であり、主に貯蔵エネルギーとしての役割を持ちます。そして、②の一部は細胞膜の主成分となり、③はホルモンなどいずれも重要な役割があります。
皆さんもご存知の「コレステロール」は細胞膜の成分として重要な他、胆汁酸やステロイドホルモンの前駆物質となります。
血清中のコレステロール値は、食生活やストレス、性別や年齢によっても異なります。正常値は、150~220mg/dlで高脂血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎炎などでは高値となり、飢餓状態、甲状腺機能亢進症、重度肝障害などでは低値となります。
例えば閉経後の女性の場合、エストロゲンなど女性ホルモンの減少によりホルモンバランスが変化します。そのため人体は抵抗力をつけるためにコレステロールを貯えようと防御反応を起こし、その数値が上昇することがあります。そのため、コレステロール値が基準値以上だから不健康であると簡単には言えません。
ある研究の発表で、コレステロール値が基準値内の方と、少し高めの230dlの方とでは、がんの発病率が少し高めの方が低い数値を示したと言うのです。これは、コレステロールがステロイドホルモンの材料として働くため、免疫力が高いのではないかと考えられます。この事から、少しコレステロール値が高いからと言って安易にお薬で抑制する事は、少し考え物です。医師の指導の下、食事療法や運動療法を行い様子を見る事が懸命ではないでしょうか?
・・・さて、体内のコレステロールのうち、食べ物から摂取されたものは実は約3割に過ぎません。え!?っと疑問に思った方もいらっしゃると思います。認識としてはイカやタコ、貝類、イクラ、ウニなどはコレステロールが多く含まれる食品ですが、これらにはコレステロールを下げるアミノ酸やタウリンも多く含まれているので、相殺効果があります。コレステロールというと残りの7割は糖質や脂肪酸を材料に、主に肝臓で合成されています。そのため、コレステロールの少ない食事をしているから安心とは限らないのです。甘い物やお酒などでもコレステロール値は上昇しますので、これら嗜好品は取りすぎないように心がけましょう。