今回のお話の食中毒にも様々な種類があり、梅雨時に多いのが「細菌性食中毒」です。その他、冬季の11月~4月頃に学校や老人ホームなどでウイルス(ノロウイルスや腸アデノウイルスなど)が原因でウイルス性下痢症を集団発生する「非細菌性微生物食中毒」や、ふぐ毒のテトロドトキシンやキノコ毒のアマニタトキシンやノイリン等の中毒による「自然毒性食中毒」、食品添加物や農薬により起こる「化学物質性食中毒」があり、このように大きく分けて4つの食中毒があります。
①細菌性食中毒
②非細菌性微生物食中毒
③自然毒性食中毒
④化学物質性食中毒
*ここでは、①に挙げた細菌性食中毒について詳しく説明いたします。
細菌性食中毒は、「感染型」「毒素型」「アレルギー様食中毒」に区別されます。
感染型は、細菌が人体に進入して発病するもので、毒素型は細菌が増殖してその増殖時に発生する毒素により発病するものです。そのため、この場合は細菌自体の生死は直接原因には関与しません。
細菌性食中毒=①感染型 ②毒素型 ③アレルギー様食中毒
感染型食中毒には、「腸炎ビブリオ食中毒」「サルモネラ食中毒」「病原性大腸菌O-157食中毒」などがあります。腸炎ビブリオ食中毒は、日本でもっとも多い食中毒で汚染された海産魚介類(タコ・イカ・アジ・シラス等の近海産)を生食することによって起こります。菌は熱に弱い性質で60℃位の熱で死滅するので梅雨や夏場は出来るだけ生で食す事を避ける事が第一予防となります。もし、生で食す時は流水で洗う事をおすすめ致します。
それは、この細菌は3%前後の塩分を好むため病原性好塩菌とも呼ばれるのですが、この細菌の特性をりようして真水で水洗いをしっかり行なう事である程度殺菌が可能だからです。また、魚介類を調理した器具等をしっかり水洗いし、熱湯消毒を行なう事により二次感染を予防する事ができるため、この細菌の食中毒が多い夏場は行なう事がベターでしょう。
サルモネラ食中毒は、野生動物をはじめ鶏や豚などの家畜が保有する事が多く、これらのし尿により食品が直接・間接的に汚染された事により起こる場合が多いようです。食品に対する十分な加熱を行い、ハエやネズミなど感染源の駆除、新鮮な食品の利用などが重要となります。
また、鳥の腸内常在菌であるため生卵を食べるときは新鮮なものや検査済みのものに限り、それ以外は加熱する事が望ましいでしょう。
病原性大腸菌O157食中毒は、本来大腸菌は日和見菌であるため人体に有益な作用も行なう非病原性の細菌ですが、本菌の中にも病原性を持ち腸炎を引き起こす特殊な大腸菌がいるとして注目を浴びるようになりました。特に、抵抗力の弱い乳幼児や老人などに感染率が高く下痢症を引き起こします。成人には感染力が弱いのですが、菌が大量に増殖した食品を一度に摂取すると、急性胃腸炎を引き起こします。そのため、食品の低温保存や十分な加熱殺菌など食品管理が重要といえます。
それでは次に毒素型食中毒ですが、代表的なものに「ブドウ球菌食中毒」「ボツリヌス菌食中毒」があります。ブドウ球菌食中毒は、その原因菌のブドウ球菌が産生するエンテロトキシンと言う毒素が原因となります。ブドウ球菌は私達人体の体表や空気中、家中の家具などどこにでも生息していて食品に付着しやすいので感染の危険性が身近に潜んでいます。この毒素は、加熱処理しても毒性は破壊されないので注意が必要です。煮込み料理などをして長時間そのまま放置しておく事は、細菌の繁殖には好都合ですので、特に夏場などは調理後速やかに冷蔵保存を行なう事が予防法として推奨します。そして、不衛生な手指は直接的な感染源となりますので、手洗いや手に化膿巣のある方は調理などを行なわないことです。
ボツリヌス菌食中毒ですが、この菌は他の菌の毒素とは違い神経に作用し呼吸困難を引き起こすため、致命率が高く非常に危険です。その毒性は1gで100万人の命を殺めるほどで、あのサリンの何倍も毒性が高いと言われます。大変怖い菌ですが本菌の毒素は熱に非常に弱いので食品の摂取前に数分間煮沸する事で予防出来ます。
最後なりましたがアレルギー様食中毒は、顔面紅潮・頭痛・ジンマシン等アレルギー様症状が出る事が特徴です。サバやカツオ、サンマ、イワシなど魚の筋線維にあるヒスチジンが腐敗細菌により脱酸素作用を受けてヒスタミンなど有害なアミン類が産生される事により起こります。
食中毒で発生する諸症状は下痢・嘔吐・発熱・疼痛などですが、例えば下痢の場合は安易にお薬で下痢の症状をとめようとはしないで、下痢は治癒反応であるため出した方が良いとされます。この場合、脱水症状になる恐れがあるため適度な水分と塩分の摂取を行なうと良いでしょう。また、昆布茶や梅醤番茶などは胃腸を優しくいたわってくれるのでおすすめします。
鍼灸治療においては、裏内庭や解谿が解毒には有効とされています。
参考文献:衛生学・公衆衛生学(医師薬出版)