何気ない動作で肩を傷められ挙上不全の患者様がいます。
ご高齢になると関節を保護する筋や腱といった軟部組織はとても弱くなっているので、本人は何とも思わない動作で気が付いたら傷めている、ということは少なくありません。
患者様は治療の継続で順調に回復が進んでいて
ある日のこと
「先生、昨晩は夜に痛くて痛くて辛かった」
そう言うのです。
確認すると、
患肢の肩関節は上腕骨頭がやや前方で肩関節が内旋しています。一言で言うと亜脱臼しているわけです。
肩関節は腱板という筋により関節を保護されているわけですが、高齢でお痩せになり組織が弱化していると関節は不安定で些細な事で上腕骨頭が関節からずれてしまいます。
検査を進めると、
前腕が回内し肘関節は屈曲位で抵抗が
そして上腕や頚部、肩甲間部や腰部にいつもにない緊張があるので、
一定時間肘を曲げて下を向いた姿勢で物を持つか作業をしたかな?と想像し
患者様へ、(上記から)何かしましたか?と聞くと
「いや〰️実は雑巾を1枚縫いましてね!」
「先生〰️には直ぐバレますね!」
と。
私は問題のある箇所を鍼灸とオステオパシーで調整後に肩関節を整復。
すると痛みが楽になり関節可動域も拡大しました。
「あらー嬉しいわ!」と患者様。
お互いに笑っていると、、、
「いやー先生ね、、」
「調子が良くなったので私も何か出来ないかと思って
世話になっている娘のために
何か喜んで貰える事はないかと、、、。」
「私には雑巾くらいしか縫えないから
ちょっと気張って(頑張って)縫いました!」
「雑巾じゃ娘も喜ばないだろうし止めとこうかな。」
それを聞いて私は、
「娘様はとてもとても喜んでいると思いますよ。それと同時に感謝しきれないと考えておられます。何かをしてあげたいと娘様はいつも考えておられるでしょうね。それもあって私もご縁をいただいて来ているわけで、、。」
「いつも娘様はお母さんには感謝していて、お母さんのそういうお気持ちをとっても喜んでおられますから、今回の事も何にも気にしないでください。」
お互いに温かい気持ちが伝わってくるご家族様で、お話をうかがうと私も同じようにとても嬉しく感じます。
内心ジーンとなって涙が出そうになりました。
患者様の話は更に深くなり、、、
「主人との出会いがあって娘を授かって、もし一つでも道が違ったら主人とも出会えていないしむすめも授かっていないわけですから、、」と
ご家族様の大切なお母さん。
それは私にとっても同じく大切な存在です。
私にどれ程の事ができているかは自身では分かりませんが
患者様のお話や嬉しそうな笑顔を見ると
幸せな時間を過ごすお役に立てているかな?
患者様へは
「私が責任を持って診るので何も心配しないでくださいね」と
ご家族様へも「状態から続けるとまた傷める可能性があります。でもまた痛くなるからやらないで!と制限するのではなく、やれる事を残してあげましょう。再発しないように私が状態管理しますから、温かく見守りましょう。」と伝えました。
ご家族様は「そうですね。私共もそうしてあげようと思っています。それが○○(患者様)の良さなので。」
雑巾一枚
患者様は何時間かけてどういう想いで針を通していたことでしょう。
考えるだけで心が温かくなります。
そんな患者様やそのご家族様にもっと喜んでいただけるように
私はこれからもひたすら努めたい。
ご縁をありがとうございます。